日々の暮らしに彩りを。生涯学習で始める「書く」習慣
なぜ今、「書く」ことが生涯学習として注目されるのか
子育てが一段落したり、お仕事に区切りがついたりして、ご自身の時間が増えたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。新しい趣味を探している、これまでできなかったことに挑戦したい、とお考えの方も多いかもしれません。
そんな中で、改めて「書く」という行為に目を向けてみるのはいかがでしょうか。インターネットやスマートフォンの普及により、文章を書く機会は減ったと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は「書く」ことは、私たちの暮らしを豊かにし、学びを深めるための素晴らしい手段となり得ます。
日々の出来事を記録する、自分の気持ちを整理する、誰かに想いを伝える、何かを表現する。書くことは、自分自身と向き合い、考えを深め、そして他者と繋がるための大切な行為です。生涯学習の観点から見ても、「書く力」を磨くことは、脳を活性化させ、表現力を高め、人生の質を向上させることに繋がります。
この記事では、生涯学習として「書く習慣」を始めることの魅力と、具体的な第一歩の踏み出し方についてご紹介します。デジタル機器の操作に少し苦手意識がある方でも始められる方法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
「書く習慣」の種類と、自分に合ったものを見つけるヒント
一口に「書く」といっても、様々な種類があります。まずは、ご自身の興味や目的に合わせて、どのような「書く習慣」を始めてみたいか考えてみましょう。
-
日々の記録:
- 日記: その日の出来事や感じたことを自由に書き留めます。数行でも、箇条書きでも構いません。後で読み返すと、自身の変化や成長に気づくことができます。
- 感謝日記: その日に感謝したこと、良かったことを書き出します。ポジティブな気持ちになれる習慣です。
- ライフログ: 食事、運動、読書、趣味など、特定の活動を記録します。健康管理や趣味の振り返りに役立ちます。
-
コミュニケーション:
- 手紙・はがき: 離れて暮らす家族や友人へ、近況や感謝の気持ちを手書きで伝えます。温かみが伝わるアナログな手段です。
- メール: デジタルですが、丁寧な言葉遣いや分かりやすい構成を意識することで、よりスムーズなコミュニケーションが可能になります。
- SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)投稿: インターネット上のサービスで、短い文章や写真とともに日々の出来事や考えを発信し、友人や共通の趣味を持つ人々と交流します。
-
自己表現・創作:
- 俳句・短歌・川柳: 五七五や五七五七七などの短い定型に、日々の感動や心情を込めます。観察力や表現力が磨かれます。
- エッセイ: 身の回りの出来事や自身の経験について、自由に文章を綴ります。
- ブログ: インターネット上で自身の文章や情報を公開する場所です。特定のテーマについて深く掘り下げたり、趣味の記録をまとめたりできます。
どの「書く習慣」も、特別な才能は必要ありません。「何を書いてもいい」「誰かに見せる必要はない」という気楽な気持ちで始めるのがおすすめです。まずは興味を持てるもの、負担に感じないものから試してみてはいかがでしょうか。
「書く」を始めるための具体的なステップ
「よし、始めてみよう」と思ったら、まずは以下の簡単なステップから取り組んでみましょう。
ステップ1:何を書くか、まずは小さなテーマを決める
最初は壮大なテーマは必要ありません。「今日の晩ごはんのこと」「散歩で見かけた花の名前」「読んで面白かった本の感想」「嬉しかったこと」など、身近で書きやすいことから始めてみましょう。箇条書きでも、単語だけでも大丈夫です。
ステップ2:使う道具やツールを用意する
手書きで始めるなら、お気に入りのノートと書きやすいペンを用意しましょう。書く時間を持つのが楽しくなります。 デジタルで始めるなら、普段お使いのスマートフォンやタブレット、パソコンのメモ機能や日記アプリなどがすぐに使えます。もしパソコンをお持ちでなければ、スマートフォンのメモ機能だけでも十分に始められます。スマートフォンの文字入力に自信がない場合は、まずはゆっくりと入力練習から始めてみるのも良いでしょう。
ステップ3:短時間から、とにかく書いてみる
完璧を目指す必要はありません。まずは「1日5分だけ」「ノートに1行だけ」など、ご自身に無理のない範囲で始めてみましょう。「書かなきゃ」と気負うのではなく、「ちょっと書いてみようかな」という気持ちでペンやツールを手に取ってみてください。
ステップ4:続けやすくするための工夫をする
習慣にするためには、無理なく続けることが大切です。 * 書く時間や場所を決める: 「寝る前にベッドサイドで」「朝食後にテーブルで」など、書くタイミングや場所を決めておくと、自然と行動に移しやすくなります。 * 書きたい時に書く: 義務に感じてしまう場合は、「毎日必ず」ではなく、「書きたい気分になったら書く」でも構いません。 * 誰かに見せなくても良いと割り切る: 上手に書こう、誰かに評価されたい、と考えすぎると負担になります。まずは「自分のために書く」という意識で取り組みましょう。
生涯学習として「書く力」を磨く学びの場
一人で書く習慣を続けるのも良いですが、より深く学びたい、他の人と交流したいという場合は、様々な学びの場を活用するのも良い方法です。
-
手書きの美しさを磨く:
- ペン習字・書道教室: 地域の公民館やカルチャースクールで開かれている教室に参加する。先生から直接指導を受けることで、正しい姿勢やペンの運び方を学べます。基礎から丁寧に教えてもらえるので、初心者の方でも安心です。
- 通信講座: 自宅でテキストやDVDを見ながら、自分のペースで学ぶことができます。添削指導を受けられる講座もあり、継続しやすいのが特徴です。
-
デジタルでの文章表現やツール活用:
- 地域のIT教室: スマートフォンやパソコンの基本的な操作方法、メールの書き方、インターネットでの情報検索などを学べます。デジタルに苦手意識がある方も、対面で質問しながら学べるのでおすすめです。
- オンライン講座: 自宅にいながら、様々なテーマの講座を受講できます。ブログの書き方、SNSでの発信方法など、興味のある分野を専門家から学べます。パソコンやタブレットの操作に慣れていない場合は、操作説明が丁寧な講座や、電話・メールでのサポートがある講座を選ぶと良いでしょう。
-
創作力を高める:
- 文学講座: 小説や詩、エッセイなどの書き方を学びます。名作を読み解きながら、自身の表現方法を探求できます。
- 俳句・短歌サークル: 同じ趣味を持つ仲間と作品を批評し合ったり、吟行(実際に場所を訪れて句や歌を詠むこと)に出かけたりします。刺激を受けながら創作に取り組めます。地域の集まりやオンラインのコミュニティなど、様々な形態があります。
学びの場に参加することで、同じ興味を持つ仲間との出会いも生まれます。一人で学ぶのとは違う楽しさや発見があるはずです。まずは体験レッスンや説明会に参加してみることから始めても良いでしょう。
焦らず、自分のペースで「書く」を楽しもう
「書く習慣」は、すぐに劇的な変化をもたらすものではないかもしれません。しかし、日々少しずつでも書き続けることで、以下のような効果が期待できます。
- 自己肯定感が高まる: 自分の考えや感情をアウトプットすることで、自分自身をより深く理解できます。
- 頭の中が整理される: モヤモヤしていた考えや複雑な情報が、文章にする過程で整理されていきます。
- 記憶力・観察力が高まる: 書くために物事をよく観察したり思い出したりすることで、脳が活性化されます。
- コミュニケーションが円滑になる: 相手に分かりやすく伝えるためにはどう書けば良いか考えることで、話す力も向上します。
- 日々の小さな幸せに気づける: ポジティブな出来事を書き出す習慣は、感謝の気持ちを育み、幸福感を高めます。
生涯学習として「書く習慣」を始めるのに、遅すぎるということはありません。完璧を目指す必要もありません。自分のペースで、書くこと自体を楽しんでみてください。ノートとペン、あるいはスマートフォンのメモ機能。まずは身近なツールを使って、今日あった出来事や心に浮かんだことを、ほんの少し書き出してみることから始めてみませんか。きっと、日々の暮らしに新しい彩りが生まれるはずです。